個別最適学習ラボ

書字障害のトレーニングってどんなもの?合理的配慮についても解説
書字障害のトレーニングってどんなもの?合理的配慮についても解説

こんにちは。

SOLE個別最適学習ラボ編集部です。

私たちは、大阪で発達障害のお子さんへの学習支援を行っています。


今回の記事では、書字障害のお子さまに対して、私たちがどのようなトレーニングを行っているかをご紹介したいと思います。

書字障害のトレーニングを行うためには、字が書けない原因を明確にするのが大切、ということを、前回の記事でお伝えしました。

まだお読みでない方は、前回の記事も目を通していただけますと幸いです。

それでは、書字障害のトレーニングについてご紹介いたします。

○【書字障害】字を書くための基本的機能のトレーニング

文字が書けない原因は様々である、ということを前回の記事でお伝えしました。

そして、字が書けない原因を明確にしたのち、それらに対してどういう支援をしていくかを考えます。

文字を書くためには、「文字を書くトレーニング」だけが有効なわけではありません。

椅子に安定して座り、鉛筆を動かすこと。

お手本の形が正しく見えること。

相手が発した「音」が「言葉」として認識できること。

これらの基礎能力が土台となり、「読んで、聞いて、書く」という一般的な勉強が出来るのです。

ただ単に「文字を書く」だけを頑張っても、土台が出来ていないとなかなか積みあがっていきません。

ここでは、上の図でいう緑の部分、字を書くための基礎能力へのトレーニング方法をご紹介いたします。

①「見る力」に対するトレーニング

・眼球運動のトレーニング

眼球運動にも種類があるのですが、今回は「目線で追いかける」トレーニングをご紹介します。

①追いかけよう

指を一本立てて、子どもの前で動かします。

子どもは、首を動かさず、目だけで指先を追いかけてもらいます。

目だけで「キョロキョロ」する状態ですね。

指でなくても、お気に入りの人形や、シールを貼った棒なども使えます。

②ボールキャッチ

机の上でボールを転がし、反対側にいる子どもにキャッチしてもらいます。

ボールが小さければ小さいほど、距離が長ければ長いほど難しいです。

・視知覚機能のトレーニング

①点つなぎ

子どもの知育などでも定番の「てんつなぎ」です。

視知覚機能のトレーニングの場合、どこからどこまでを一本の線で書くか、に意味があります。

左のようなクロスを書くとき、みなさんはどう書きますか?

多くの場合は、真ん中でクロスする形、2本の直線で書くと思います。

しかし、視知覚機能が弱いお子さんの中は、右の図のように、中央で区切られたバラバラの直線を書く場合があります。

直線が、交差した先にも続く「長い直線」であることが認識できず、このような書き方になってしまうのです。

支援の方法としては、見本の図形を太い色ペンなどで色分けし、「一本の直線」「大きな四角」などで捉える練習をさせる、などがあります。

②ジオボード

点つなぎで上記のようにバラバラに書いてしまう場合には、「ジオボード」を使うことも有効です。

ジオボードは、ボードのピンに輪ゴムをかけ、模様をつくる教具です。

おもちゃとして販売されているものもありますね。

見本どおりの形になるように輪ゴムをかけていくのですが、どの見本を使うかで難易度が変えられます。

色分けした見本が優しく、白黒の見本が難しいです。

また、輪ゴムが重なると難しくなっていきます。

なお、これらの「見る力」に対するトレーニングをまとめて「ビジョントレーニング」といい、ビジョントレーニング専門の支援施設もあります。

リンク:ベストビジョンスタジオ

②音韻処理に対するトレーニング


・しりとり

しりとりをするためには、言葉の一番うしろの音が何か、を把握する必要があります。

例えば、「りんご」だと 「r i n g o」 の 「go」が最後の音ですね。

しかし、音韻処理が苦手だと「ngo」が一文字のように認識してしまい、「んぐ、、」という言葉を探してしまいます。

さらに言うと、「ん」から始まる言葉はない、ということも認識しづらいです。

ひらがなが読めるお子さんの場合は、ひらがなで単語が書いてあるカードを並べてしりとりをしたり、ひらがなを書きながらしりとりをすることで、音文字の対応をトレーニングできます。

また、音韻処理が苦手な場合、喋っている言葉の発音も曖昧な場合があります。

(これを「構音が悪い」といいます。)

専門家としては、言語聴覚士(ST)がいますので、相談できる場所を探すのもよいでしょう。

③協調運動の障害に対するトレーニング

・座り方を再確認する

まずは、両手が動かしやすいような環境を整えましょう。

  • 安定した机と椅子
  • 足裏が地面や足台につく
  • 手で身体を支えずに座る

体幹が弱い(姿勢が悪い)場合には、体幹をトレーニングすることが有効です。

よく勘違いされるのですが、シンプルな腹筋運動・背筋運動だけでは、姿勢がよくなりません。

姿勢がよくなるためには、体幹を支える筋肉を「長時間・持続的に」働かせることが大切だからです。

なので、その場限りの筋トレよりも、

「寝っ転がらず、座ってテレビを見る」

「座ってばかりでなく、散歩する・外遊びする」

といった、生活の中で背骨を伸ばす場面を増やすことが大切です。

なお、自宅で出来るトレーニングのおすすめはバランスボールです。

普通の椅子に座るよりも、体幹での支えが必要になるので、テレビを見る時などに座るといいトレーニングになります。

・目線を動かしながら、鉛筆を動かす練習

先ほども出てきた「点つなぎ」は、鉛筆操作のトレーニングとして使われることも多いです。

目的地の点はどこか、目線で確認したのち、実際に手を動かします。

視覚的な情報と、手の動きの「協力プレイ」が必要になるトレーニングですね。

そのほかにも、迷路・塗り絵・なぞり書きなどでも、トレーニングが出来ます。

どこに気を付けて行うのか、一緒に行う大人が伝えてあげることが大切ですね。

○【書字障害】字を覚える・書くことへの支援

機能面の底上げも必要になってきますが、

・文字の覚え方

・文字を思い出す方法

など、文字を書くことそのものへの支援も出来ます。

先程の図でいうと、赤の部分に関する支援ですね。

いくつかご紹介します。

字の覚え方を工夫する


「漢字を覚える」というと、一般的には「お手本の字を見ながら書く。何回も書く。書けるようになるまで繰り返し書く。」という勉強法になってしまいます。

書字障害のお子さんの場合、やみくもに何回も書いても効果は薄いと言えるでしょう。

専門家による本人の評価のもと、本人の得意な部分と苦手な部分を明確にし、本人が得意な部分を使って漢字を覚えていくことが有効です。

口唱法漢字の書き方を絵描き歌の要領で覚える。ミチムラ式、下村式など。視覚的な記憶よりも、聴覚記憶の方が得意な場合に有効。
エピソード記憶法漢字を思い出す手がかりとして、何かしらのエピソードと関連づけること。漢字の成り立ちをストーリーとして読んだり、その漢字を使った言葉から覚えていく。
漢字パズル漢字をパーツごとに分解して、その組み合わせで捉える。視知覚機能が弱い場合、細かいパーツまで正しく見ることが難しいので、簡単なパーツに分けたものを組み合わせると、正しい漢字を認識しやすい。
触読法文字が盛り上がって印刷されたものを触りながら読むことで漢字を覚えていく。触覚と文字を関連付けて覚える方法。触るグリフという商品として販売されている。

どの方法が適しているかは、お子さんの持っている能力によります。

合理的配慮も検討しよう

ノートを書いたり、テストを受けるなど、学習において書く場面は非常に多いです。

しかし、書くことが苦手な場合、書くことに必死で授業を聞けなかったり、書くことに疲れてしまい、学習についていけなくなることもあります。

ノートを書くかわりに、PCやタイピング、写真などで記録が出来ると、ぐっと学習がしやすくなることは想像できると思います。

このような場合に、学校や教育機関にPCやタブレットの利用を認めて貰うことを「合理的配慮」と言います。

大阪府のホームページでは、以下のように説明されています。

障がいのある人が教育を受ける場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。

例えば、

・聴覚過敏の生徒のために、机やいすの脚に緩衝材をつけて教室の雑音を軽減する。

・支援員等の教室への同伴や、授業でのノートテイクやパソコン入力支援等を許可する。

・意思疎通のために、手話や要約筆記のほか、絵や写真カード、タブレット型端末等を活用する。

・入学試験において、別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可する。

といったものが挙げられます。

https://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai_guideline.html
大阪府障がい者差別解消ガイドライン<令和3年3月改訂版> 教育分野

どのような方法が良いかは、本人の状態や、受け入れる学校の設備によっても異なるため、入学前や進学時に事前に相談するのが良いでしょう。

また、合理的配慮を受ける為には、どのような障害がありどのような配慮が必要かについて、専門家による意見書や検査結果が必要になることが多いです。

具体的には、医療機関からの診断書や、障害児支援施設からの検査結果・意見書などです。

私たちSOLEでも、公認心理士による検査を行っており、意見書を発行しています。

これまでも、保護者の方々のご希望で何度も検査結果・意見書を発行し、保護者から教育機関に提出していただきました。

しかし、それだけでは合理的配慮を得ることができず、私たち支援者から教育機関にご相談にうかがって、やっと配慮を貰えることが多いです。

まだまだ、書字障害や学習障害についての世間の周知は進んでおらず、合理的配慮を得るハードルは高いというのが現実です。

○まとめ

書字障害は、世間にあまり知られておらず、「頑張れば書ける」と何度も練習させられてしまい、本人が自信を失ってしまうことが多いです。

また、合理的配慮を求めても、なかなかスムーズに配慮が貰えません。

本人の字が書けない原因を明確にした上で、それに適したトレーニングをすること。

見方になってくれる専門家を探し、教育機関に合理的配慮を求めること。

これらが大切だと思います。

SOLEでは、書くことに苦手さのあるお子さんの検査を行い、その原因を検討したり、合理的配慮や学習方法についての今後の方針を立てることができます。

お困りのことがあればご相談ください。