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ADHDの子どもたちへの学習支援って?│今日から試せる対応や学習アプリ紹介
ADHDの子どもたちへの学習支援って?│今日から試せる対応や学習アプリ紹介

こんにちは。SOLE個別最適学習ラボ編集部です。

皆さんはADHDという言葉を耳にしたことはありますか?

ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の1つであり、不注意(注意がそれやすい)多動性(落ち着きがない)衝動性(衝動的に行動にうつしてしまう)といった特性があります。

今回は上記の特性をもつ子ども達の学習支援の方法について述べていきます。

ADHDとは?

ADHD(注意欠如・多動症)は、一般的に「発達障害」という名前で知られている、脳の機能障害の分類の一つです。

ADHD以外の発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)や、LD(限局性学習症群)などがあります。

発達障害は生まれつきのもので、親の育て方や環境など、後天的な原因でなるものではありません。

お子様がADHDであったとしても、「親の育て方や関わり方が悪かった」ということでは決してありません(参考:黒澤礼子『新版 発達障害に気づいて・育てる完全ガイド』)。

ADHDについて理解を深め、支援方法や学習の仕方について知っていただくことで、子育ての助けになればと思います。

※発達障害は現在、医学的には神経発達症と呼ばれるようになっています。まだ新しい名前が十分に認知されていないので、この記事では「発達障害」の表記で統一しています。

ADHDの診断基準

ADHDを持つ子どもの脳では、ドーパミンという物質の機能障害が想定され、遺伝的要因も関連していると考えられています。

下記などの条件が全て満たされたときにADHDと診断されます。

①「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

②症状のいくつかが12歳以前より認められること

③2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

④発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

⑤その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

このようにADHDの診断は医師の診察で観察された行動上の特徴に基づいて行われ、単独で診断ができるような確立した医学的検査はありません。

(参考:アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)

ADHDの特徴

ADHDの基本症状には、不注意多動性衝動性の3つの症状があります。

不注意

先生の話をきいて連絡帳やノートをとることができない、忘れ物が多い、注意散漫になりやすく授業中にすぐに他のことに関心を移すなどがみられます。

多動性

授業中に離席し、立ち歩いたり、許可なしに離れた友達のところへ行って話しかけたり、教室の後ろにあるランドセルの中の物を取りに行ったりするなどの行動がみられます。

衝動性

いきなり物を投げる、軽はずみで唐突な行動が多い、ルールの逸脱がたびたび生じるなどの行動がみられます。

    

上記のような特性があることで、学校や会社などでストレスがつのり、学校や仕事に行きたくないと感じたり、朝起きられなかったりすることがあります。

ときに、身体に症状が現れる・気持ちが落ち込むなどの心身の不調につながることもあります。

ADHDの子の学校での困り感

ADHDの小学生は、「不注意」の特性が勉強面、「多動・衝動性」の特性が学校生活面で表れやすいといわれています。

不注意による困りごと

・順序立てや整理整頓が苦手

・係や日直、当番の仕事を忘れる

・ケアレスミスが多い

・忘れ物やなくしものが多い

・提出物の締め切りを守れない

・課題を途中でやめてしまう

・コツコツやることを避ける、イヤイヤ行う

多動・衝動性による困りごと

・授業に集中しづらい(授業中に席を立つ、歩き回るなど)

・おしゃべりがやめられない

・ほかの人の話に横入りしたり、話が終わる前に質問したりする

・集団生活のルールを守れない

・気にいらないことが起こると、つい手が出てしまう

なお、ADHDによる多動性の傾向は、成長にともなって弱まっていくこともあると言われています。

ADHDの子どもに対する支援

ADHDの子どもたちの不適応な症状は、本人のせいでも、家庭のせいでもありません。

周りの環境に適応できず困っているのは子どもたち自身なのかもしれません。

その視点をもって、子どもたちへの支援を考えていきましょう。

ここではSOLE・テトラcocoでも意識的に取り入れている5つのアプローチをご紹介します。

①本人を知る

ADHDの子どもの支援において大切なのはまず、特性を理解することです。

・本人の得意なことや興味のあること

・本人の苦手なこと

どのような場面・状況でどのような行動をとるのかということ

得意なことは伸ばし、本人を認めてあげましょう。

苦手なことはスモールステップで乗り越える工夫を考えてあげましょう。

行動の特性に関しては、知っておくことで事前に準備できることが増えます。

②環境整備

子どもを取り巻く環境を学習しやすいものにするための方法としては、教室での机の位置や掲示物などを工夫して本人が少しでも集中しやすくなる方法を考える物理的な介入法や、勉強や作業を10~15分など集中できそうな最小単位の時間に区切って行わせる時間的な介入法などが効果的です。

・掲示物、学習用具の配置や量、色を工夫する

・周りに刺激のある場所は避ける

・少人数で支援する

・指導者に近い席にする

集中しやすい環境を整えてあげることで、ADHDの子どもたちでも学習に取り組みやすくなります。

指示を出すときも注目を集めてから「はっきりと話す」ことが効果的です。

指示は短くわかりやすいものにしましょう。

視覚的な補助手段を利用することも有効です。

集中できる時間が限られていますので、徐々に時間を延ばすなどの工夫が必要です。

子どもと一緒に目標を決めて、達成できたらしっかりフィードバックしてあげましょう。

③自信をつける

認められることは、子どもたちの自信につながり、意欲を持って取り組もうという姿勢を育てます。

もちろん危ないことや本当にいけないことをしたときには、毅然とした態度で分かりやすく説明することは必要ですが、むやみやたらと叱ったり押さえつけたりするのではなく、できることに目を向けてあげましょう。

ADHDのお子様は、その特性からよく怒られる経験をしています。

そのような中、無理に言うことを聞かせようとすると逆効果になってしまいます。

子どもの行動のうち、好ましい行動に報酬を与え、好ましくない行動に対しては報酬を与えないことで、好ましい行動を増やそうと試みる手法があります。

問題行動を抑制できたことやその頻度が減ることなどにも注目してしっかりとそのときにフィードバックすることが重要です。

報酬が一定数たまったら何らかの特別なご褒美・行事への参加(映画に行く・博物館に行くなど)につなげることも有効です。

障がいの有無にかかわらず、子どもは「認められる」ことで自信をつけ、より前向きな行動とつながっていくものです。

できたことをほめ、成功体験を積み重ねることで、自己肯定感が育っていくでしょう。

④ソーシャルスキルの向上

ソーシャルスキルとは、社会生活を送る上で必要となる技能のことです。

ADHDの子ども達は、多くの子どもたちが幼児期から人とのつきあいで自然と身につけるこの技能が身につきにくいといわれています。

そのため、話の聞き方、挨拶の仕方、仲間への入り方等のスキルを学ぶ場が必要です。

相手の意図や気持ちを理解したり、自分自身の感情や行動をコントロールしたりできるように、支援を入れていく必要があります。

たとえば、様々な場面を想定したロールプレイを行う、よりよい行動を実際に示してみせる、などです。

「相手がどのような表情をしている?」と問いかけて、考えさせ、子ども自身に気づかせることもときにはいるかもしれません。

放課後等デイサービス事業所などでは、ソーシャルスキルトレーニング(SST)と呼ばれています。

テトラcocoでも小学校1年生から中学校3年生まで学年ごとにSSTを行っています。

⑤関係機関や専門機関との連携

保護者様は、診断を受けるまで、自分の子育てが悪いのではないかと悩んだり、しつけが悪いと周りから批判されたり辛い思いをしているのではないでしょうか?

学校対応がうまくいかず、子どもの捉え方が行き違うことについて悩んでいる保護者様も多いです。

しかし保護者様が不安定だと、子どもたちにも大きな影響を与えます。

まず、学校との信頼関係を作っていくために、子どもの良いところを見つけ、強みを伸ばして育てていく視点を共有していきましょう。

家庭と学校が支援の情報共有をすることで、子どもは混乱することが減り、学習に向かいやすくなります。

また、複数の眼でみて対応の方法を考えて行くことも大切です。

ADHDのある子どもも適切なサポートや治療を受けることができれば、悪循環から抜け出して能力を伸ばしていくことができます

そのため、ADHDを疑ったら早めに専門機関に相談するとともに、早い時期に専門医の診断を受けましょう。

専門家からのアドバイスを受けることで、保護者様もお子様にもっと向き合いやすくなり、適切な支援ができるようになるでしょう。

ただ、いきなり専門医を探して受診するのはハードルが高い、と感じる人も多いでしょう。そこでおすすめなのが、身近な専門機関の無料相談窓口を利用することです。

・保健センター

・子育て支援センター

・児童相談所

・発達障害者支援センター

・児童発達支援センター

・児童発達支援事業所

地域の保健センターや子育て支援センターなどは、これまでも健診などで利用したことがあるという方も多いでしょう。

自宅近くの専門機関やかかりつけの小児科なら、気軽に訪れることができるかもしれません。

SOLEでは保護者様の不安やお悩みに関しても電話無料相談でお伺いさせていただいております。

どこにも相談できずに困り感を抱え込んでいる保護者様がいらっしゃれば、一度お問い合わせください。

学習支援の具体例

アプローチに気を付けておいても、特性による困りごとが起こる可能性はあります。

具体的に学習の中で困りごとが起きている状況をイメージし、事前に支援方法を考えておくことでスムーズな対応ができるでしょう。

話をきいていないようにみえるとき

注目させてから、話を始める

・ 指示は、具体的なことばで短く簡潔にまとめる

・ 全員に話した後、個別に確認する

・ 必要に応じて、写真や絵カード等の視覚的手がかりを用いたり、文字で書いて提示したりする

人の邪魔をするとき

・ 行動の理由をきく→「~したかったんだね」と共感的に気持ちを受け止めてから、どうすればよいかということばや行動を教える

・ 攻撃的な感情が生じたときには、落ち着くまでその場を離れる方法をとるなど衝動をコントロールする方法を身につけさせる

・ 危険な行為については、「なぜいけないか」をその場で説明するようにする

・ 友だちと遊ぶ楽しさや、協力する体験を重ねさせる

多動性が強く、離席するとき

・ 「10分間(集中できる時間)すわります」、「離席2回までは可」というようなルールを決める

・ 今からしようとする行動を、ことばで先に言う習慣をつけさせる

・ 教材配布係等、動いてもよい状況を作り、授業中に活躍の場を与える

・ 学習の前に活動エネルギーを発散させる時間をとり、集中しやすくする

作業や課題を仕上げられないとき

・ 外からの刺激を取りのぞき、学習場所を区切られた状態にする等、集中できる環境をつくる

・ 子どもが「できる」と見通しが立てられるような課題の量にし、内容を考慮する

・ 集中力が切れ続かないときは、自由時間も取り入れ、めりはりがつくようにする

ケアレスミスを何度もしてしまうとき

・細かくノートやメモを取る習慣を教える

・「はやく仕上げること」よりも「ていねいに行うこと」を重視させる

・指示は形に残るもので行い、いつでも確認できる状態にしておく

・見直しの仕方をチェックリストなどにまとめ、手順に従って行えるようにする

順序だてて物事をすすめることが難しいとき

優先順位を保護者や支援者と一緒に確認する

・やることリストやスケジュール表を作り目につくところにおく

・一日単位で生活の流れを書き出し、やることも行動が具体化できるまで細かく書き出したうえで、実行する→うまくいかない場合、振り返ることが必要

忘れ物、なくしもの、遅刻が多いとき

・物の置き場所を決める

・重要な書類は頻繁に持ち歩かない、一か所にまとめる癖をつける

アラームを何重にもかける

リマインダー機能を活用する

ADHDの子どもにおすすめな学習アプリ

ADHDをふくむ発達障害や学習障害の子どもたちにとって、電子機器を活用した学習は効果的です。

学校やご家庭でタブレットを使った学習を行っておられることも多いでしょう。

電子機器を活用した教育は、教育現場では「ICT教育」とも呼ばれます。

今回は中でもADHDのお子様に適しているアプリをご紹介します。

魔法のプロジェクトを参考に、テトラcocoでも利用したことのあるアプリを以下に抜粋させていただきましたのでご覧ください。

カメラ/動画閲覧

覚えておきたいと思ったことを見たまま撮影して記録できます。

CamScanner- スキャン、PDF 変換、翻訳 カメラ

無料。

テキストを自動的に認識し(OCR)、仕事や日常生活の効率を向上させます。

このスキャナーアプリを無料でダウンロードして、PDF、JPG、Word、またはTXT形式のドキュメントを即座にスキャン、保存、共有できます。

ビデオで視覚支援「まねるんです」

無料。

「まねるんです。」は、iPad/iPhoneの写真アプリのビデオにタイトルをつけて再生できるモデリング用のアプリです。

ある行動や活動などを言葉や文字で説明されるよりも、ビデオをみて学ぶほうがはるかに分かりやすい場合にこのビデオモデリングアプリを利用します。

時間管理

継続中の作業内容、休憩や作業時間の終了に気づけます。

予定の把握もできます。

Googleカレンダー

無料。

• カレンダーの表示形式 – 月ビュー、週ビュー、日ビューの 3 つの表示形式を簡単に切り替えることができます。

• Gmail からの予定 – フライト、ホテル、コンサート、レストランの予約などが自動的にカレンダーに追加されます。

• ToDo リスト – 予定だけでなく、タスクの作成、管理、表示もカレンダー内で行うことができます。

Time Timer

無料。

時間の経過を視覚的かつ具体的に変えるオリジナルのタイマーです。

スマートフォンやスマートウォッチを楽しく簡単なビジュアルタイマーに変えることができます。

絵カードタイマー

無料。

シンプルなタイマーに絵カード表示機能を付加しました。

時間の把握が難しい方へのタイムエイドとしての使用に適しています。

残り時間を視覚的に分かりやすく表示するだけでなく、同時に絵カードを表示することで、何のための時間かを表示することができます。

録音

覚えておきたいと思ったことを聞いたまま録音して記録できます。

ボイスメモ

無料。

iPhone、iPad、Apple Watchがポータブルなオーディオレコーダーになり、個人メモ、家族とのひととき、クラスの講義などの録音や共有が簡単になります。

何度も聞いて覚えるための暗記カード

¥390。

耳で問題と解答を繰り返し聞いて覚えられます。

質問と解答の音声、または、テキスト読み上げを何度も聞いて覚えるために特化したアプリです。

デジタル教材

音声や画像、動きのある教材で飽きずに楽しむことができます。

操作も簡単に行えます。

9×9カード

無料。

シンプルな九九カードのアプリです。

カードのタップで答えを表示、スワイプで次の問題が表示されます。

九九の読み方も表示します。

初期設定の読み方は変更することができるので、通っている学校で教わっている読み方に変更できます。

小学生の漢字勉強:ひとコマ漢字

無料。

小学生の一年生から六年生を対象とした、漢字の書き取りを強化するために作られた無料の勉強アプリです。

小学校で習う漢字をすべて網羅しており、新学習指導要領にも対応しています。

書き取りに正解すると、問題文の内容が漫画風のイラストとして見ることができるようになっており、様々な楽しい文章で、続けられる仕組みになっています。

かなもじ

¥600。

子どもと一緒に「よんで」「かいて」「さわれる」電子絵本です。

75点のさわって動くイラストや、文字のなぞり書き、ぬり絵で遊びながら、楽しく「ひらがな」「カタカナ」を学べます。(濁音・小文字にも対応)

シンプルな画面構成です。

絵本アプリのPIBOで絵本を読もう!寝かしつけや読み聞かせに

無料(アプリ内課金あり)。

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まとめ

今回の記事では、ADHDの子どもへの学習支援とその方法について述べてきました。

同じADHDでも、性質や性格は子どもによってそれぞれ異なります。

一人ひとりの状況や特性にあわせた適切な支援を行っていくことで、よりよい発達状態へと導くことができるかもしれません。

大切なのは、子育てのしづらさを感じている保護者様に対しても支援をして、協力しながら学習をすすめていくこと。

お子様と保護者様にとって相性の良い事業所を見つけ、ぴったりの支援を受けてくださいね。

SOLEでは、発達に凸凹を抱える子どもたちの才能が開花し、将来自立した大人になることができるようにお子様と保護者様の支援を行っています。

もちろん、一人ひとりにあわせた学習方法のご提案もさせていただいております。

ADHDの特性を抱えているお子様もいて、そのような方々の進路相談・勉強支援などにも実績があります。

SOLEのホームページをご覧の上、少しでも気になる方は、お気軽にお問い合わせください。