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2023.09.02
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自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)とは!?-3つの特徴・対処法-
自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)とは!?-3つの特徴・対処法-

自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)とは!?

自閉スペクトラム症とは、
①社会的コミュニケーションの障害
②対人的相互反応(社会性)の障害
③行動・興味・活動の限定された反復様式
を特徴とする発達障害の1つです。

以前は、「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」など、いくつかの分類がありましたが、現在は「自閉スペクトラム症」に統一されています。
「スペクトラム」とは連続体という意味を持つ言葉であり、一つ一つ単独の障害ではなく、「自閉症」という中の連続体という概念に変化し、アメリカ精神医学会の定める診断基準である「DSM-5」で名称が「自閉スペクトラム症」になりました。

自閉スペクトラム症の人の中には、知的障害を伴う場合もあれば伴わない場合もあります。
以前「アスペルガー症候群」と言われていた方は知的障害を伴わない方です。

自閉スペクトラム症の特徴

・対人関係・コミュニケーションの苦手さ

先程も書きましたが、自閉スペクトラム症の方は、「社会的コミュニケーションの障害」と「対人的相互反応(社会性)の障害」を特徴とします。

自閉スペクトラム症の方は、感情や気持ちなどの目に見えないものを推測することが苦手です。
非言語的なコミュニケーション(表情や声の調子、言動などから相手の情動を推測すること)が難しく、誰かと興味や話題、感情、イメージを共有するようなことが少ないため、日常会話の中でも困難さが見られます。
話の流れとは関係なく急に自分の考えを述べてしまったり、場面にそぐわない言うべきではない言葉を言ってしまったりしてしまうことがあります。
そのため、「空気の読めない人」「相手の気持ちを考えず発言する人」という評価を受けてしまうことがあります。
また、相手がその発言をした意図がくみ取れず、そのまま受け取ってしまうため冗談がわかりにくかったり、比喩表現が理解できず会話が噛み合わないということが起きてくるのです。

このように、自閉スペクトラム症の方は、人間関係を維持し発展させ、相手を理解することに難しさがあり、様々な社会的場面に合った行動を選択したり、他者と何かを共有することに苦手さがあります。
この背景には、「心の理論」の発達に障害があることが関係しています。

「心の理論-theory of mind-」とは・・・
心の理論とは、心というものについて考え、理解し、見えないものについて推測したり行動の予測力を高める能力のことです。
他者の心の状態や、相手が次にどういう言動をするのかを推測したりする時に働く機能です。
この心の理論は、発達の理論上だいたい4~6歳で理解できるようになると言われています。

自閉スペクトラム症の子ども達は、この「心の理論」の発達に課題があると言われています。
そのため、相手の「気持ち」や「意図」をくみ取ることが難しいのです。

ただ中にはこの心の理論の発達課題を、「知識と経験」で補って行くこともあります。
特に、以前「アスペルガー症候群」と言われていた人達の中には、正しいことを教えてあげることで、知識として獲得し相手の気持ちを推測していくことができるようになる子ども達もいます。

・特定のものへの強い興味

自閉スペクトラム症の方は、行動や興味がとても限定されていることがあります。
特定のものに関して、とても強い興味を持ちます。

一般的に見ると、それのどこがそんなに興味を引くのかわからないものであっても、自閉スペクトラム症の方にとってはものすごく興味深いものだったりするのでしょう。

水に興味を持つお子様や、扇風機などのクルクル回るものに興味を持つお子様、電車などの乗り物、標識や記号、数字など・・・興味の対象はお子様によって様々です。
しかし、自閉スペクトラム症のお子様の、その興味を持った分野に関する行動力や知識、記憶力などは、とてもエネルギーの高いものであることが多いと言えます。

・日常生活のパターン化

自閉スペクトラム症のお子様は「こだわりが強い」と言われます。

例えば、毎日同じ道を通って帰ることや、毎日同じ場所に同じものを置くこと、毎日同じものを食べることなどにこだわることがあります。
これは、「同一性へのこだわり」や「習慣へのこだわり」と言います。
自閉スペクトラム症のお子様は、反復的な行動様式を好むので、「毎日同じである」ことが安心材料になります。
そうすると、生活がパターン化することが多くみられます。

この同一性や習慣が崩れるとパニックになったり、不安が高まったりすることもあります。
パニックは怒ったりしている訳ではなく、不安が高まりどうしていいのかわからないことから起きることが多いです。

・感覚の過敏さまたは鈍感さ

他の特徴としては、感覚の過敏さ、または鈍感さがあげられます。

過敏さについては、五感が敏感で、音や光、におい、味、肌触りなどに特定の苦手さを見せることがあります。
特定の音を行くことが難しかったり、特定の味のものしか食べられなかったり、特定の服しか着ることができないこともあります。

鈍感さについては、痛みがわかりにくかったり、暑さや寒さを感じにくいことがあります。
そのため、怪我をしても平気そうにしていたり、服装が季節と合っていなかったりして、社会生活の中で驚かれることもあります。

どんな感覚が過敏で、どんな感覚が鈍感なのかは、そのお子様それぞれです。
ただ、過敏な刺激は不快なものになりやすく、お子様にとってストレスになりやすいことがあるので、取り除けるものは取り除いていくことも必要です。
例えば、音の過敏さ→イヤーマフを使ってノイズを減らす・・・など。
不快な刺激が減ると安心して安定的に過ごしやすくなります。

自閉スペクトラム症の大人と子どもの違い

・そんなに大きな違いがあるわけではない

自閉スペクトラム症は、大人になってから発症することは、ほとんどありません。
その人の人生の早い時期(幼少期)から、上記のような特徴が見られるまたは、その片鱗が見られることが多いです。

大人になってから診断される方もいらっしゃいますが、「思い返せば幼いときから・・・」というように、大人になってから、いきなり症状が現れるというよりは、幼い頃から社会生活の中で何かしらの違和感や困難さを感じておられた方が多いと言えます。

自閉スオペクトラム症の特徴については、子どもと大人で大きな違いはありません。
ただ、成長の過程で、こだわりが緩くなったり、逆に強くなったり、興味関心の移り変わりがあり、様相が変わって見えたりすることがあります。
また、前にも書いていますが、社会的コミュニケーションの苦手さはあれど、成長の過程で経験や知識で培ったスキルによって、その苦手さをカバーする方もいらっしゃいます。

そういう面を見ると、大人と子どもでは、少し違いが見られるかもしれません。

・自閉スペクトラム症が別の問題を発生させる可能性

自閉スペクトラム症の方が、成長の過程で上手くいかない経験を沢山積んでしまうと、「二次障害」を引き起こすことがあります。

これは、自閉スペクトラム症以外の発達症の方々にも当てはまることです。

適切なタイミングで適切な支援が受けられず、失敗経験を積んでしまったり、怒られてしまう経験が多くあると、自己肯定感がぐっと下がってしまいます。
上手くいかないのにどうすればいいのかわからない状況や、叱責されたり否定されたりする状況を繰り返し経験することで、精神的な二次障害や問題行動的な二次障害に繋がることがあるのです。

精神的な二次障害について述べると、自閉スペクトラム症の方は、対人関係やコミュニケーションの苦手さがあるため、社会生活の中でストレスと受けやすい場合があります。
そのストレスが長期間続いたり、増大したりすると、うつ病や適応障害などの精神病理的な二次障害に発展してしまうことがあります。
他にも、お酒やゲームなど対する依存症や、不安が高く外に出ることが難しくなり引きこもりになってしまうこともあります。

問題行動的な二次障害については、ストレスから攻撃的になり暴力に繋がってしまったり、窃盗や恐喝などの犯罪行為を実行してしまうこともあるようです。

ここで重要なのは、確かに二次障害に陥るケースがあるのは事実ですが、必ず全ての自閉スペクトラム症の方が二次障害になるということではありません。
専門的で適切な支援が、お子様が必要としている時に実施されることがとても重要です。
ストレスを軽減したり自己肯定感を高めることを繰り返したりしていくことが大切なのです。

子どもが自閉スペクトラム症かも!?と思ったら・・・

・専門機関に相談に行く

お子様の発達について「あれ?」と思うことが場合には、まずは専門機関に相談に行くことが大切です。

お子様の発達において、「自閉スペクトラム症かも?」と保護者の方が思うタイミングは割と早期が多いです。
・言葉を話し出すのが遅い。
・なかなか目が合わない。
・抱っこすると嫌がって泣く。
・泣き出すと止まらない。
・特定のもの以外食べない。
・お母さんがいない場所でも不安がったりしない。
・手をヒラヒラさせたり、壁や机をトントン叩いているような行動が続いている。
などがあげられます。
そのお子様の様子で、保護者の方が「育てにくさ」を感じることもあります。

子どもの発達について「あれ?」と思った時に相談に行くことおができる専門機関は次の通りです。
・保健センター(就学前まで)
・医療機関(小児科、小児神経科、発達外来・・・など)
・市や区の相談窓口
・教育委員会の相談窓口(就学後)
・子ども相談センター、子ども家庭センター
・保育所や幼稚園、学校への巡回指導

自閉スペクトラム症のお子様は、幼少期に「言葉の遅れ」が見られることが多々あるため、乳幼児期の健診で「言葉の遅れ」から発達についての指摘があり、発達検査を受けたり医療機関を受診し、診断に至ることが多いです。
他にも幼稚園や保育園で集団生活に困難さが生じ、医療機関や市役所や区役所などの相談機関に相談に行かれることも多いです。

健診の時には、保健センターの保健師や心理師に相談することができます。
特に指摘がなかったとしても、保護者の方からのお子様の発達に関する相談は受付ているので、「あれ?」と思った時には、1歳半健診や3歳健診のタイミングで相談してみるのもいいかもしれません。

学齢期になると、学習の困難さが見られたり友人関係でのトラブルが増えたりすることがあります。
その時には、市役所や区役所の子育て相談の窓口や教育委員会の相談窓口、医療機関へ相談にいかれるとよいでしょう。診断は医療機関の医師にしか出せませんので、診断を受ける場合には医療機関に行っていただくことになります。

市や区の相談窓口、教育委員会の相談窓口では日々のお子様の様子や、保護者の方の子育てに関する相談など、様々な相談に対応しています。
「もしかして自閉スペクトラム症かも?」と思った時に相談に行くと、場合によっては発達の相談を受けてくれる医療機関を紹介してもらうことも可能です。

お子様の発達については、早期に気付いて早期から必要な支援を行うことが重要です。
そのためには、「あれ?」と思ったところで、専門機関へ相談に行ってみてください。

・お子様の「得意」に目を向ける

お子様の発達について、「あれ?」と思うことが増えてくると、「できないこと」に目が向きがちです。
特に集団生活の中では、同年代の他のお子様と比較してしまい、「なぜできないのか」を気にしていまうことも多いのではないでしょうか。

お子様の発達は本当に個人差があります。
「得意」と「苦手」は千差万別で、一人ひとりの個性を作り上げるものです。

自閉スペクトラム症という診断をもらったからといって、お子様が成長しない訳でもありません。
子どもはどんな子どもでも、必ず発達し成長します。

その発達・成長の過程で、適切な支援を実施していくことが大切なのです。

では、適切な支援はどう実施していくのかというと・・・
お子様の「得意」と「苦手」を正しく把握する必要があります。
そのためには、専門機関へ相談に行き、発達検査や知能検査等を行い、お子様の能力の中で何が「得意」で何が「苦手」なのかを客観的事実として把握・分析し、具体的な支援方法へ繋げていくことが重要です。

また、自閉スペクトラム症のお子様には、感覚の過敏さや鈍感さ、コミュニケーションの様式などにも注目し、包括的な支援を行っていくことが大切です。

自閉スペクトラム症のお子様は、得意と苦手の差がとても大きいのです。
「苦手」を克服することを目指すのではなく、「得意」に着目して「得意な力」を使って苦手をカバーする支援方法が有効です。
「得意」な力をどう活かしていくのかを考え、お子様に安心感や達成感を持たせながら自己肯定かを高めていく支援ができるといいでしょう。

SOLEプログラムでは、お子様の「得意」と「苦手」を専門的知見から、科学的根拠を基に分析し、お子様一人ひとりに最適な支援方法をご提案しています。
お子様の「得意」に目を向けて、学習を中心に、どのように生きていくのがそのお子様らしい生き方なのかを、お子様・保護者様と一緒に考えさせて頂きます。

是非、教育提案をご利用ください。