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特別支援教育における教育と福祉の連携の必要性②〜保育所等訪問支援って何?~
特別支援教育における教育と福祉の連携の必要性②〜保育所等訪問支援って何?~

こんにちは。

SOLE個別最適学習ラボ編集部です。

子どもたちの学校での様子や事業所での様子が気になる保護者様

家庭と情報共有をしたい学校関係者様、福祉事業所関係者様

前回は教育と福祉、家庭の連携について、相談先や今どのような取り組みが進められているかをご紹介しました。

今回は保育所等訪問支援事業についてお伝えしていきます。

学校などの教育現場と放課後等デイサービスなどの福祉現場、そして家庭とが情報共有できる保育所等訪問支援について、気になっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定でも、インクルージョンに向けて、保育所等訪問支援の取り組みの充実が掲げられています。

今回は、保育所等訪問支援について、内容やメリット、事例とともにご紹介いたします。

保育所等訪問支援とは

まず、保育所等訪問支援のサービス内容についてご紹介していきます。

教育と福祉が連携して行う障害児支援のうち、名前は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどのようなものなのかよくわからないという方も多いかもしれませんね。

保育所等訪問支援は、発達に凸凹のある子どもが保育所や学校などで集団生活を送りやすくするための支援を行うサービスです。

公的な障害児通所支援サービスのひとつで、平成24年の児童福祉法改正で創設されました。

障害の有無に関わらず、住み慣れた地域でともに暮らす社会の実現を目標にしています。

保育所のみならず、園や学校、学童、放デイといったお子様の集団生活の場に専門知識を持った支援員が訪問し、保護者と施設との連携をもとに、お子様が園や学校での生活を楽しく送れるように支援します。

では、業務内容や実施のメリットなど、くわしくお伝えします。

保育所等訪問支援の具体的な内容

・対象児

保育所、幼稚園、小学校などに在籍している18歳までの児童です。

集団生活を行うにあたって支援を要するお子様であれば、診断や障害者手帳の有無は関係ありません

児童発達支援や放課後等デイサービスの通所の有無も関係ありませんが、自治体窓口での通所受給者証の申請は必要です。

(申請には診断書などは不要です)

・申請について

保育所等訪問は保護者からの依頼で提供されるサービスです。

お子様が通っている施設の職員等、事業者からの申請は行うことができません

障害児相談支援事業者、保育所等訪問支援事業者とのやり取りと、自治体からの通所受給者証交付が済めば、支援がスタートします。

・訪問先

保育所だけではなく、幼稚園、認定こども園、小学校、

中学校、高等学校、支援学校、フリースクール、放課後等デイサービス、児童発達支援

放課後等児童クラブ(学童)、乳児院、児童養護施設など、自治体がお子様の集団生活の場であると認めたものであれば訪問が可能となっています。

・利用頻度と訪問時間

利用は月1〜2回を目安に状況に応じて行います。

時期によって頻度は変化します。

訪問時間は1回につき、直接支援および間接支援を合わせて2時間から半日程度です。

お子様への直接支援が1〜2時間、スタッフへの間接支援が1時間程度が標準とされています。

・費用

通所受給者証の利用により、かかった費用のうち9割が自治体、1割が利用者の負担です。

お子様の年齢、世帯所得により負担額が決まっています。

・ニーズの例

友達とのトラブルが多くかかわり方をみてほしい

授業中の離席が気になるため様子を見てきて支援してほしい

指示の理解ができているか気になる

就学先を迷っているため園や療育先の様子が知りたい

〇放課後等デイサービスでできるようになったことを学校でも活かしたい

・一般的な保育所等訪問支援の流れと具体的な支援内容

①事前の取り組み

保護者から相談を受けたら、障害児相談支援事業者が訪問先と連携をとり、実態を把握し、支援の必要性を見極めます。

ここで担当者が一堂に会する支援会議が行われることもあります。

訪問支援が必要であるとされた場合、自治体から支給決定を受けたのちに、保育所等訪問を実施する事業所が支援計画を作成し、保護者への説明・契約を経て、訪問先と訪問の日程調整をします。

②観察・直接支援

訪問支援員が学校や施設に訪問し、お子様の様子を観察します。

困っていることやその原因について分析し、何を支援すればよいのか考えます。

訪問先で教育活動の妨げにならないようにお子様の困りごとに対して直接働きかけるのが直接支援です。

集団活動内で手助けができる範囲で、本人の能力が発揮できる方法を試します。

③間接支援

お子様に直接働きかけるのではなく、周辺の環境を整えたりスタッフにかかわり方を伝えたりして間接的に支援するのが間接支援です。

お子様の特性などの情報共有を行い対応の提案を行います。

今後の指導方法、教材、イベントの参加方法等を話し合うなど、お子様が楽しい集団生活を送ることができるように連携していきます。

④報告・家庭連携

保護者に訪問先での様子と支援内容の報告をします。

スタッフの関わり方と今後の支援の方向性について伝えたり、お子様の成長について共有したりします。

参考:保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書 (H28,厚生労働省)

   保育所等訪問支援ガイドライン (R6,子ども家庭庁)

保育所等訪問支援のメリット

保育所等訪問支援は、子育て支援施策や教育の現場に入り込んで行う「アウトリーチ型」の発達支援事業です。

従来の発達支援施設への通所で発生するメリットはそのままに、デメリットを払拭したのが保育所等訪問支援です。

・集団生活のなかで、発達上の課題に気づきやすい点

・お子様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの専門的支援が可能になる点

・通所支援で学んだことを集団生活でも活かせる点

・進級、進学とお子様の成長によって通所施設が変わっても継続的な支援ができる点

・訪問先のスタッフとの意思疎通がスムーズにできるようになる点

・保護者と情報共有がしやすくなる点

手続きなどに時間がかかることがデメリットかもしれませんが、保育所等訪問支援を通して、保護者と訪問先の距離が縮まると、お子様が安心して過ごせる場所が増えます。

また、お子様の成長・発達を共有することで、本人に合った保育や教育を受けることができ、本人のもつ力を最大限に引き出すことができるでしょう。

保育所等訪問支援の実施に関して

ここまで、保育所等訪問支援についてその概要やサービス内容をお伝えしてきました。

実際にSOLEでも、ご契約者様の学校との連携のため、保育所等訪問支援を行う場合がございます。

また、福祉サービスであるテトラcocoでも同様に専門支援員を配置し、保育所等訪問支援を承っています。

基本的には学校、家庭と情報を共有しながらよりよい支援ができることを目指すものであるため、普段の指導と併用しての利用が望ましいですが、受給者証の取得が難しい場合のみ実費でも対応可能ですので、ご相談いただければと思います。

お子様が通う園や学校などの施設に訪問することで、支援方法の統一などを検討し、お子様が安心して集団生活を送れる環境を整えていきます。

教育の効果を最大限に引き出し、一緒に本人のもつ能力を伸ばしていければと思います。

学校と福祉サービスの連携についてご心配がある保護者様はお気軽にご相談くださいませ。

個別最適学習プログラム「SOLE」

一般社団法人テトラcoco

保育所等訪問支援の実際の事例

最後に、こちらで実際に担当した保育所等訪問の事例を3件、ご紹介いたします。

〇Aくん(小学校低学年)のケース

算数の授業を支援級取り出しで行っていたAくん。

学級の内容を支援級の先生に付きっきりで教わっていた。

・教科書通りすべてを網羅するのではなく、本人に必要な四則計算をゆっくり進めていこう

・「誰かに付いてもらってできる」ではなく、「指示を具体的にすることで一人でできる」を目指そう

学校との打ち合わせでそう決まり、少しずつ自分の力でできる計算が増えた。


〇Bさん(小学校高学年)のケース

友達の言葉遣いをまねて乱暴な言葉遣いをすることがあるBさん。

注意しても本人の中で事実が曲がってしまい、他責の言葉が出てくることがあった。

どのように伝えれば本人に伝わりやすいかを学校や家庭と一緒に考えた結果、

・その場ですぐ本人に伝え、どう伝えればよいかも合わせて指導していく

・状況が理解できていないときは、紙に書いて整理して指導する  

上記の方法で対応していくことで、本人の言葉遣いに落ち着きがみられるようになった。


〇Cくん(中学生)のケース

受験生だったCくん。

提出物の管理や学習場所の確保がなかなかうまくできなかった。

学校と密に連携することで、提出物のスケジューリングから、学習の仕方の共有、教え方や言い回しの統一はもちろん、自習をどこで進めていくのか、までを本人と話して決めることができた。


どのケースも学校と連携することで支援の方向がはっきりし、お子様が学校生活を行いやすくなったといえます。

まとめ

今回は保育所等訪問支援事業についてご紹介いたしました。

保護者様がご家庭以外のお子様の様子を知りたい場合や、支援内容の話し合いを行いたい場合、通所支援以外の療育の形を探すのも一つでしょう。

専門性のあるスタッフが、お子様の特性に合わせた集団の中での過ごし方をご提案いたします。

もし、保育所等訪問支援事業に関してさらに詳しく知りたい、利用に興味がある等ございましたら、SOLEまでご連絡ください。