こんにちは。
SOLE個別最適学習ラボ編集部です。
子どもたちの学校での様子や事業所での様子が気になる保護者様
家庭と情報共有をしたい学校関係者様、福祉事業所関係者様
発達に凸凹のある子どもたちへの支援にあたっては、行政の分野を超えた切れ目ない連携が必要であり、一層の推進が求められています。
とくに教育と福祉の連携については、学校と児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所などとの相互理解の促進や、保護者を含めた情報共有が不可欠であると指摘されています。
こうした課題を踏まえ、各自治体が主導し、文部科学省と厚生労働省は、「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト」を発足させました。
また、学校内外でも発達に凸凹のある子どもに対しての支援を相談できる体制が整備されつつあります。
今回は、支援が必要な子どもやその保護者に対しての支援状況と学校内外での連携について、詳しくお伝えしていきます。
家庭・教育・福祉の連携「トライアングル」プロジェクト
先述した「トライアングルプロジェクト」とは、「家庭・学校・障害児通所支援事業所の三者が連携し、お子様の情報を円滑に共有することにより、お子様への支援の充実につなげること」を目的として、平成30年度より厚生労働省・文部科学省が推進しているプロジェクトです。
具体的な内容は、文部科学省、厚生労働省、子ども家庭庁のHPにもそれぞれ記載があります。
参考:家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト(文部科学省)
家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト(厚生労働省)
家庭・教育・福祉の連携についての合同連絡会議(子ども家庭庁)
ここでは、現状あがっている課題とそれに対しての今後の取り組みをご紹介していきます。
主な課題
・教育と福祉の連携における課題
そもそも教育側も福祉側もお互いの仕組みをあまり理解できていないことが多いです。
学校と福祉事業所において、お互いの活動内容、担当者の連絡先などが共有されていないため、円滑なコミュニケーションが図れていない、というのが現状です。
また、学校の先生の中には、放課後等デイサービスなどの福祉サービスをよく知らない方もいるので、情報の共有を行っても、そこがどういった場所なのか、何のために必要かがわからず、協力が得られにくいこともあります。
福祉サービススタッフについても同様で、学校の仕組みをわかっていない場合、どこまでの連携が可能かわからない、という課題があります。
そのうえ、県や市区町村で、学校を管轄している部署と、放課後等デイサービスなどを管轄している部署がそもそも違うので、そういった点でも連携のしづらさがあるといえます。
・保護者支援における課題
乳幼児期〜学齢期、社会参加に至るまでに必要となる相談窓口が分散しており、保護者は「どこにどのような相談機関があるのか」がわかりにくく、必要な支援を十分にうけられないことがあります。
市区町村によって細かくは異なりますが、
子育てについての相談は、子ども関係部署
学校に就学に関する相談は、教育委員会
障害児サービスについては、障害福祉関係部署
というふうに窓口がたくさんあります。
どこに相談したらいいのか迷うだけでなく、「支援の必要な子どもについては障害福祉の関係部署に相談」となると少しハードルが高いと感じてしまうこともあるようです。
加えて、子育ての悩みを気軽に話せる場所が少なくなったというのも課題です。
親世代と一緒に暮らすことや地域のつながりが昔ほどなくなってしまったこともあり、保護者が孤立感や孤独感を感じやすくなっています。
今後の対応策
・教育と福祉の連携のために
①教育委員会と福祉部局、学校と障害児通所支援事業所との関係構築の「場」の設置
それぞれの地域にある特別支援連携協議会や自立支援協議会を活用しつつ、相互理解できるような場を設けていこうとしています。
②学校の教職員等への障害のある子どもに係る福祉制度の周知
学校教員に対して、障害児サービスについて知ってもらえるよう福祉事業所の職員を招いて研修会等を開くことで、学びの機会を提供しようとしています。
③学校と障害児通所支援事業所等との連携の強化
ほかの地域での連携事例を参考にしながら、それぞれの地域でどのような連携ができるかを考えていくことが求められています。
また、厚生労働省が放課後等デイサービス向けに「放課後等デイサービスガイドライン」を出しているのですが、内容を教育と福祉の連携を強化したものに検討・改正していくことも示しています。
(参考:子ども家庭庁 令和6年7月版 放課後等デイサービスガイドライン)
のちにご紹介する「保育所等訪問支援」も、児童福祉法に基づいて、教育・家庭・福祉の連携体制を構築するための、情報交換や交流の場となっています。
④個別の支援計画の活用促進
学校では支援が必要な子どもに「個別の教育支援計画」を作りますが、その際に保護者や福祉事業所等も連携して作成することが必要だとされています。
「個別の教育支援計画」が学校生活に関してだけでなく、家庭生活や地域での生活を含めたものになるようにと考えられているのです。
一貫した支援が計画的に進められるように保護者や関係機関の参画を促しています。
福祉事業所もサービス提供の際、一人ひとりに応じた個別支援計画を作成しますが、もちろんその際も保護者のニーズの聞き取りや学校での内容との連携は求められています。
・保護者支援を推進するために
①保護者支援のための相談窓口の整理
わかりやすい相談窓口を作っている市区町村等の事例を踏まえ、保護者がどこに相談すればいいかをわかりやすく示すとともに、直接の担当でない職員であっても保護者がたらい回しにならないように適切な窓口を紹介できるよう工夫を促すことが求められています。
②保護者支援のための情報提供の推進
障害児サービスが利用しやすくなるよう、市区町村等において情報が一目でわかるような保護者向けハンドブックを作成して周知する事が必要だとされています。
また、国がハンドブックのひな形等を作ることが示されています。
③保護者同士の交流の場等の促進
悩みを共有したり、先輩の保護者から話を聞いたりすることで安心できる部分があるため、ピアサポートの推進、ペアレントメンターの養成実施等を促しています。
さらに家庭での学びのために、ペアレントプログラムなど、保護者が障害特性について理解出来る機会を増やす取り組みもすすめています。
↓以前個別最適学習ラボでご紹介した保護者支援についての記事もご参照ください。
④専門家による保護者への相談支援
家庭が福祉サービスを利用する際に相談にのり支援計画をたてる相談支援専門員が、知識や経験を積むことで、より子どもに適した支援計画の作成や保護者への助言がしやすくなります。
専門性を高め、保護者としっかり情報共有をするためにも、専門家の学びの場も重要視されてきています。
取り組み例
文部科学省
・個別の支援計画を活用しながら、切れ目ない支援体制を整備
卒園→就学時や中学校進学時等、ライフステージの変わり目での引継ぎでしっかりと情報共有が行われるようにしています。
また、保健師や相談支援事業所を介して子どもに必要な支援を考えることもあります。
・保護者や関係機関と連携した支援計画の作成について、ガイドラインや手引書に明記
項目として保護者や関係機関と協同で支援を行うこと・連携の推進をあげており、理解を深めたうえでともに環境整備を行ったり、専門的な判断にもとづいて支援内容を工夫したりすることが述べられています。
厚生労働省
・放課後等デイサービスガイドラインの改定
移行支援、家族支援、地域支援についてより詳しく書かれるようになりました。
また、関係機関との連携には児童発達支援センター、子ども家庭センター、医療機関などが追記されています。
・障害福祉サービス等報酬改定で拡充した連携加算を活用し、学校との連携を更に推進
質の高い発達支援の提供のために関係機関連携を従来よりも評価しています。
家族支援も充実させることで、学校だけでなく家庭とも連携をとりやすくしました。
学校内での連携
つづいて、学校内では支援の必要な子どもたちにどのような支援体制を整えているのかを簡単にご説明します。
2007年4月に文部科学省から「特別支援教育の推進について(通知)」が出されてから、特別な支援を必要とする子どもへの支援体制は整ってきています。
また、2016年4月に施行された「障害者差別解消法」では本人等から意思の表明があれば、障害のある全ての人への「合理的配慮」の提供が求められることとなりました。
こうした社会の変化にともない、特別支援教育はさらに充実・発展することが期待されており、子どもたちが障害の有無にかかわらず共に学べるような学校づくりが求められています。
とはいえ、通常級で担任がクラス全員の指導を受け持ちながら、特別な支援を必要とする子どものことも気にかけ支援を行っていくことは難しいのが現状です。
学校内で、支援のためのチーム作りが今一度どのようになっているのか確かめていきましょう。
校内ネットワーク
地域や学校によって体制や状況に差はあるかもしれませんが、学校の中で協力しあえる役割として次の人達が挙げられます。
家庭や福祉事業所は積極的に連携をとっていきましょう。
・特別支援学級の先生/通級指導教室の先生
子どもが支援学級や通級に属しているもしくは就学時等に相談をかけている場合、担任同等に子どものことを知っているのが特別支援学級の先生や通級指導教室の先生でしょう。
それぞれ専門的な知識を持っている場合や、研修を受けている場合もあります。
校内にこれらの学級がある場合、担当者と連携をとり、いつでも子どものことを相談できるような体制をつくっておくと安心です。
・特別支援教育コーディネーター
校内で特別な配慮を必要とする子どもの支援における中心的な役割を担います。
保護者からの相談にも対応して、必要に応じて校外の機関とも連絡を取りながら、支援の調整を行います。
必ずしも特別支援学級の担当教員が行うわけではなく、教頭や養護教諭が担うこともあります。
学校によって、年度で変わることもありますので、確認が必要です。
・養護教諭
いわゆる保健室の先生です。
発達に凸凹のある子どもたちは、身体的な不調や精神的な悩みから、保健室を訪れることもあります。
もし頻繁にそのようなことがある場合、養護教諭とも連携をとり、保健室での様子を把握しておいたほうがよいでしょう。
・スクールカウンセラー
スクールカウンセラーの多くは、臨床心理士などの資格を持つカウンセリングの専門家です。
学校によっては来る曜日が決まっているところもあれば、そもそも配置がないところもあるかもしれません。
学校に配置されていない場合あるいは定期的に派遣されていない場合、地域によっては学校から教育委員会などに派遣要請できることがあります。
教師でもなく親でもない立場だからこそ子どもが素直に相談できるという利点があります。
・特別支援教育支援員
クラスに入り込み、黒板の字を読み上げたり、一緒に教科書を読んだり、教室を飛び出してしまう子に付き添ったりなど、学習や活動において支援が必要な子の個別サポートをします。
支援内容や人員は、地域や学校によって様々で、教育委員会などが配置を行います。
担任とはお互いに役割分担し、連携しながら授業をすすめていきます。
・管理職の先生
特別支援教育の全校的な支援体制の構築や指導の方向性を整備していく役割を担っています。
校内の委員会の設置はもちろん、校外の専門機関(福祉・医療等)と連携をとること、保護者の不安を取り除く相談役になることもあります。
校内委員会について
特別支援教育の実施にあたって、文部科学省の主導により学校全体の支援体制として「特別支援教育に関する校内委員会」の各校への設置が求められています。
校内委員会とは、校長のリーダーシップの下、特別支援教育の支援体制をつくるために必要な職員で構成されます(外部の専門家が参加することもあります)。
特別な支援が必要な子どもの実態把握を行い、学級担任の指導への支援方策を具体化したり、保護者や専門的な関係機関と連携して「個別の教育支援計画」を作成したり、校内関係者で連携して「個別の指導計画」の検討・作成を行ったりします。
ただ、校内委員会だけでなく、職員会議で子どもに対する気づきや悩みを話し合う取り組みや、子どもと直接関わりのある職員で情報共有を行ったり、支援の方法を話し合ったりするといった取り組みも並行して行っている学校もあります。
学校外での連携
「家庭だけで抱え込まない」
「担任教師だけの負担にしない」…
ここまでで「子どもへの支援をひとりで抱え込まない」ということが重要になってくることがご理解いただけたのではないでしょうか。
「学校内だけで支援を完結させない」ということも同様にいえます。
支援の行きづまりを避け、よりよいサポートを求めるなら、学校外の専門家や専門機関との連携・協力が必要になります。
地域で活用できる資源を知り、積極的に多方向に相談して、支援を充実させていきましょう。
巡回相談員
巡回相談といって、特別な支援が必要な子どもへの指導・支援の充実のために、専門家が学校からの求めに応じて指導・助言をする制度があります。
自治体や機関によって、組織や相談方法は異なりますので、確認するようにしてください。
各自治体に所属する発達障害や特別支援教育などに関する知識を持った相談員が、地域内の障害がある児童がいる教育施設を定期的に巡回し、児童生徒の支援を実施する者に対して指導内容・方法に関する助言を行います。
また、支援の実施と評価についても学校に協力します。
専門家チームと連携・協力し、学校の間をつなぐ役割も担います。
専門家チーム
専門家チームは教育委員会の職員、特別支援学級や通級指導教室の教員、盲・聾・養護学校の教員、心理学の専門家、医師等を中心に構成されます。
ADHD、LD/SLD、ASDなどの特性に合わせて、子どもへの望ましい対応等、専門的な意見を助言する役割を担います。
ときには、保護者・本人への説明も行います。
特別支援連携協議会
幼稚園から高等学校までの発達障害を含む障害のある幼児児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育体制の整備を図るため、ライフステージに応じた適切な支援が受けられる体制づくりのための定期的な関係諸機関間の情報交換・意見交換を行う場として設置されています。
都道府県、市区町村によって組織のかたちは様々です。
医療、保健、福祉、教育、労働等の関係部局や、特別支援学校(盲・聾・養護学校)、福祉事務所、保健所、医療機関、公共職業安定所など多分野・多職種の関係機関等が参画し、連携協力できるためのネットワークを構築しています。
まとめ
今回は家庭と教育現場、福祉現場の連携についてお話してきました。
まだ整備されている途中のものもありますが、今後支援が必要なお子様を取り囲む関係者がしっかりネットワークを築き、お子様に対して共通の見解で関わっていくことがより要求されるのではないでしょうか。
多角的な視点からお子様の様子を捉えることで、それぞれの集団内でお子様にとっての最適な支援が見つかるはずです。
そのため、私たちも普段からスムーズな連携ができるように、保護者様にお子様の様子を伺ったり、ほかの集団ではどのような様子でいるか情報を集めて共有したりしています。
家庭・教育・福祉の連携についてさらに詳しく知りたい等ございましたら、ぜひ先に挙げた相談先を参考にしながらお近くの窓口へお問い合わせください。
もし、どこで誰に頼るべきか迷われた際はお気軽にSOLEまでご連絡ください。
一緒に考えていきましょう。