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自閉スペクトラム症のサインって?|行動特性、接し方についても解説!
自閉スペクトラム症のサインって?|行動特性、接し方についても解説!

こんにちは。

SOLE個別最適学習ラボ編集部です。

皆さんは、「自閉スペクトラム症」という言葉をきいたことがありますか?

今まで自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていたものを含む表現として使われています。

特徴として「ことばの遅れ」「強いこだわり」「興味がせまい」「人とのかかわりが苦手」…などといわれることもあり、どのようなきっかけやサインで気づくものであるのか、診断基準は何であるのか、気になる方も多いと思います。

今回は「子どもの発達に気になるところがある」と感じているご家庭に向けて、自閉スペクトラム症の診断基準や特性、どのような行動や困りごとがあるのか、をお伝えした上で、接し方や対応方法についてもご紹介していきます。

自閉スペクトラム症とは

「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」とは、主にコミュニケーションに苦手さがある・特定のものや行動に強いこだわりがある等の特性がみられる発達障害のひとつです。

特性の程度や現れ方は人それぞれ異なりますが、これらの障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがあります。

自閉スペクトラム症の歴史

1943年にカナー(Kanner.L)が「早期乳幼児自閉症」についての論文を発表したことで「自閉症(Autism)」という言葉が世界中に認知されるようになりました。

1944年にはアスペルガー(Asperger.H)が「アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)」についての論文を発表し、徐々に知的障害が目立たない自閉症の存在が知られるようになりました。

当時は、後天的なものと考えられていたため、ベッテルハイム(Bettelheim.B)の絶対受容的アプローチや、抱っこ療法などの精神療法が中心でした。

2013年 DSM-5にて、自閉症、アスペルガー症候群、および広汎性発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)として統合されました

DSM‐5…米国精神医学会(APA)の精神疾患の診断分類、第5版のText Revision。

自閉スペクトラム症の原因

原因は正確には解明されていません。

しかし、生まれつきの脳機能の異常によるものだと考えられています。

育て方やしつけの問題、愛情不足…?などと悩まれる方がいるかもしれませんが、子育てが原因ではありません

人生早期から起こる脳の働き方の違い・特性ですので、完全に治るということはありません。

けれども、できることとできないことにばらつきがある分、本人の特性にあった配慮や環境調整によって、症状の改善や発達の促進は期待できるでしょう

自閉スペクトラム症の割合

データによって多少の違いはあるものの、人口に対する自閉スペクトラム症の人は、おおよそ20人〜50人に1人(2%〜5%)は存在する可能性が指摘されています。

かつては、

・約100人に1人
・男性に多くみられ、女性の約2~4倍

という報告がありましたが、近年では知的障害や言語の遅れを伴わないため、社会的困難をわかってもらえず見過ごされてきた自閉スペクトラム症の女性もいるのではと考えられるようになりました。

自閉スペクトラム症のサイン

自閉スペクトラム症という同一の診断であっても、話し言葉がない場合から、とても流ちょうに話ができるけれども会話を双方向的に展開するのが苦手だという場合まで、特性の現れ方は人それぞれです。

最近では、自閉スペクトラム症の傾向があるお子様へ早期療育を行う例が増えてきています。

早期から療育を行うことで、本人にあった配慮や支援のもと生活を送ることができ、いじめ、不登校、抑うつなど二次的な問題を予防することができるといわれています。

そこで、どういうタイミングやサインで自閉スペクトラム症に気づくのかを下記にまとめました。

気づく時期やきっかけ

自閉スペクトラム症の特性は、生後数か月からあらわれることがあり、早ければ1歳半検診の時に気づかれることもあります。

明確なサインがみられるのは2歳以降で、3歳児検診での診断が可能ですが、赤ちゃんの頃は成長スピードの差があるため、知的障害を伴わず、言葉の発達が良好である場合には、小学校入学後や、成人になってから初めて診断を受けることもあります。

気づくきっかけとして、

目と目が合わない、笑いかけてもほほえみ返さない、指さしが少ない、模倣が少ない、言葉の発達が遅い、語彙が広がらない、こだわりが強い、感覚の過敏さがある、同世代の集団の中に入っていけない

等があげられます。

ただし、特性がみられるからといって断定はできません

また全員がすべてに当てはまるわけではなく、あらわれ方は多種多様であり、一人ひとり異なります

発達の段階に応じても異なりますし、人によって気づく時期も前後することがあります。

もしお子様の発達について悩まれている場合、小児科や発達外来に相談してみましょう。

診断について

自閉スペクトラム症の診断については、DSM-5に記述されており、下記の条件が満たされたときに診断されます。

①社会的コミュニケーションに欠陥があること
②限定的な興味、活動の限定された反復的な行動があること(反復的な身体の運動、強いこだわり、感覚過敏と鈍麻など)

また、これら①②の特性による困りごとが、

・2.3歳ごろから存在していること

・複数の状況(学校や家庭など)で起きていること

・半年以上継続していること

・それにより日常生活や社会生活で大きな影響が出ていること

・知的障害や発達の遅れでは説明できないこと

であることも診断基準となっています。

症状の程度は様々であり、1度の受診や検査で断定できるものでもないため、信頼できる専門の医療機関にかかることが大切です。

自閉スペクトラム症の行動特性

以下に一例をご紹介しますが、正確な診断のためには専門の医師や心理士による問診・面接・行動観察・検査が必要です。

□ひとりごとが多い、人の言ったことをオウム返しする

□視線が合わない、合っても共感的でない

□同じやり方や状態にこだわる

□感覚に過度に反応する、または無関心である

□言葉や身振りでなく、相手の手をつかんだり引っ張ったりして意思表示する

□表情が乏しかったり、不自然であったりする

□相手の気持ちや立場を想像することが難しい

□同年代の子どもと集団遊びやごっこ遊びができない

自閉スペクトラム症の人との接し方

自閉スペクトラム症の子どもは、ここまであげたとおり、自分の得意なことと苦手なことがはっきりしています。

得意なことを伸ばし、苦手なことは他の人に手伝ってもらいながら社会生活に必要な力を育んでいけるようにしましょう。

接し方の基本

自閉スペクトラム症の子どもと接するときは、本人の特性に合わせた接し方を心がけましょう。

  • 望ましい行動をほめる
  • 指示は短く具体的に行う
  • 見通しを伝える
  • 視覚的なツールを用いて伝える
  • 興味・関心を広げる工夫をする
  • 本人の得意が活かせるようにする
  • 感覚過敏に配慮した環境調整を行う 等

困りごとに対しての対応

①抽象的な説明、たとえ話がわからない

→「たくさん」「すこし」「できるところまで」「だいたいそろったら」などの指示はできるだけ数値化して伝える

 完成品のあるものは見本をつくっておく

 困ったときに誰にきけばよいかまで伝えておく

 伝えたい内容は簡潔に結論から話す

②一度にたくさんの情報を整理できない

→優先順位をつけてひとつずつ行えるようにする

 録音、メモやスケジュール帳、アプリなどツールを活用する

③時間や持ち物の把握が難しかったり、急に予定が変わるとパニックになったりする

→あらかじめ、いつ何をするかを視覚情報も交えながら提示しておく

 行く先ごとに鞄をかえてそこに必要なものをすべて入れておく

 タイマーを用いる

 想定されるトラブルとその対処について事前に学ぶ機会をあたえておく

 パニックになった際、どうするのがいいか本人と決めておく

④音、におい、光などに過敏で集中できない

→パーテーションなどで区切り、静かで視覚の刺激の少ない場所を準備する

 電球をかえる、半透明の色つきシートを使う、色付きめがねを試す

 音の気になる場所に行く場合、耳栓やイヤーマフを活用する

 話しかけるときは名前を呼ぶ、肩をたたくなど注意をむけてからにする

⑤相手の表情を読むのが苦手で、気持ちが理解できない

→「言わなくてもわかるだろう」と省略せず、言葉と動作で伝えるようにする

 代名詞などの曖昧な表現は避ける

 その場から離れて1人で落ち着ける場所を準備しておく

 状況整理のためにお互いの気持ちを紙に書き出す

さまざまな支援

自閉スペクトラム症の支援の基本は「療育」(治療教育)です。

1人ひとりの子どもの状態や特性に合わせた療育のプログラムは、本人の力を引き出してできることを少しずつ増やし、生活上の困難を減らす助けになったり、二次障害の予防につながったりします。

「見える化」で子どもの理解を助ける(=構造化)こと、特性に合わせて生活環境を見直したり、工夫したりすることが支援の基本となっています。

学校生活の中では、「特別支援教育」や「合理的配慮」を受けるという選択もあります。

くわしくはこちらの記事で解説しています。

困ったときに相談できる相手がいることも支えになるでしょう。

また、手帳の取得で受けられる支援もございます。

自閉スペクトラム症で知的障害を伴う場合には「療育手帳」知的障害を伴わない場合は「精神障害者保健福祉手帳」の申請対象となります。

地域で受けられるサービスは異なりますが、就労について障害者雇用枠での就労が可能になるなど、本人と家族がよりよい社会生活を送ることができるために存在しています。

自分の特性をあらかじめ知ってもらうことのできる就労パスポートというものもあるので頭においておいてください。

ご家族でどういった支援を受けるのがいいか話し合うのがいいでしょう。

当事者のお子様はもちろん、周りで支えるご家族や支援者は、ご自身をほめてあげながら、ときには息抜きをしつつ、ともに過ごしていけるといいですね。

保護者の相談先はこちらにご紹介しています。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は自閉スペクトラム症の診断基準や特性、どのような行動や困りごとがあるのか、接し方や対応方法についてお伝えしました。

自閉スペクトラム症は「人との関わりが苦手」「こだわりがある」といった発達の特性が見られますが、明確な境界線がなく、診断も難しいです。

そもそも「発達に不安がある」「特性に当てはまる」と思ってたとしても、診断がおりないこともあります。

自閉スペクトラム症をはじめとする脳の機能障害については、何度も申し上げますが、しつけや子育てが原因ではありません。

診断がつく、つかないにかかわらず、お子様の特性にあった適切な支援を受けることが何よりも大切です。

保護者様は抱え込まず、周囲の力をうまく借りながら、お子様の得意な部分に目を向けていくようにしましょう。

お子様自身は、本人の努力ではどうにもならない困りごとを抱えており、なかなか自己肯定感が育まれにくいことがあります。

そのようなとき、特性に合わせた対処法を知っていたり、周りにサポートを求められる環境を整えたりしていれば、本人の辛さは軽減し、生きやすくなるのではないでしょうか。

私たち個別最適学習プログラム「SOLE」お子様それぞれの個性に合わせ、1人ひとりが自分らしく生きていけるような支援をアセスメントに基づいて提供しています。

また、個別最適学習プログラム「SOLE」はInstagramでも情報発信を行っております。

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